【質問事例】医療法人成りにおけるクリニック不動産の所有と事業承継

ご質問内容

この度個人クリニックを医療法人成りすることとなりましたが、クリニックの土地・建物は元々自身で所有しています。

医療法人成りに際してこの土地・建物は法人に移すべきでしょうか?

回答

通常は医療法人成りに際してクリニックの不動産は移転させず個人での所有を継続するケースが多いと考えられます。

法人を第三者承継や親族内承継により「事業承継」する場合は法人所有の方がメリットがある場合もあります。

解説

理事長個人から医療法人に対してクリニックの不動産を移転させる場合、下記の手続き等が必要になります。移転させる方法としては対価として現金を受け取る方法のほか、基金拠出による方法等が考えらえます。

①理事会の承認(医療法46条の6の4)と取引後の報告(同法46条の7の2)

②不動産鑑定金額に基づく譲渡(と売買契約書の作成):税務上の時価及び医療法54条の観点から

③所有権移転登記

④各種税金の納税(法人側で不動産取得税・登録免許税、個人側で譲渡所得税(含み益がある場合)・消費税等(課税事業者の場合))

上記の理由から、通常は法人成りに際してクリニックの不動産を法人に移転させず個人での所有を継続するケースが多いと考えられます。

個人でクリニックの不動産を所有し法人へ賃貸している状態で事業承継を迎えた場合、医療法人の承継とは別に不動産の承継についても検討する必要があります。

引退後も継続的な家賃収入を得たい場合は個人所有を継続することとなります。

ただし、例えば親族内承継において下記のような理由から、事前に法人所有としておくことも有効であると考えられます。

❶クリニックの後継者と異なる相続人がクリニックの不動産を相続することを回避したい場合

❷後継者が事業用不動産を相続することによる納税による後継者の資金の持ち出しを回避したい場合(換金性のない不動産を相続することにより、お金で相続税を納税する必要が生じ、相続人が相続税の納税について持ち出しになる)

❸年々地価が上昇することによる土地に係る相続税負担の増加を回避したい場合

※不動産を法人に譲渡せずに相続で取得する際には相続人等に相続税は課税されますが、上記④各種税金のうち課税されないもの(不動産取得税、譲渡所得税、消費税等)や軽減されるもの(登録免許税、相続税について小規模宅地等の特例やその他の各種軽減措置等)がありますので、その点も踏まえて検討が必要です。

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