【コラム】将来の事業承継の観点から法人成りを考える

<ご相談内容>

個人クリニックを経営していますが親族に後継者がいないため、M&Aで第三者に承継することとなりました。

大手法人が買い手となり、譲渡対価5億円で合意しましたが、個人クリニックの場合は出資持分譲渡や退職金による清算で対価のやり取りをすることができず、譲渡対価の大半である「のれん代」は雑所得(総合課税)として最大約56%の所得税等が課税されると顧問税理士に言われました。

いまから課税を軽減する方法はないでしょうか?

<将来のM&Aに備えて法人成り>

個人クリニックをM&Aで第三者に承継した場合、固定資産に係る譲渡対価については譲渡所得となりますが、のれん代は雑所得となる可能性が高いと考えられます(参考:国税庁ホームページ「「税務および経理に関する業務」の譲渡に伴う所得の種類の判定について」)。

また、M&Aの譲渡対価に対する課税を抑えるために法人成りして退職金として譲渡対価を受けとっても、法人成りしてから5年以内は退職所得は1/2課税とされず、結果的に大きな課税軽減とはなりません(参考:国税庁タックスアンサー)。

直前にMS法人を作ってその法人の株式譲渡とするのは、事実認定上大きな問題があります。

M&Aの後も売り手が数年間在籍し続けて給与を受け取ることとした場合、その給与の受取がのれん代の金額と関係なく適切なものであればよいのですが、のれん代を減額する代わりに数年間給与を受け取ることとしたようなときは「実質的にはのれんの対価であるところを、給与に付け替えているのでは」として事実認定上問題となる可能性も否定できません(後々の税務調査で否認されるリスクがあります。)。

個人クリニックのM&Aでのれん代が高額になる場合、M&Aの場面になって急に節税することは難しいと考えられます。

このような場合、結果論として早めに法人成りしておいた方が承継時ののれん代に対する税負担は軽減することができた可能性が高いと考えられます。

「法人成り」というと、毎期の所得に対する節税のためと考えがちですが、将来の承継に備える意味でも、来患数が多く所得が高いクリニック(つまり、M&Aの際にのれん代が多額になる可能性があるクリニック)も早めに法人成りを検討したほうがよいと考えられます。

© 2026 藤澤文太税理士事務所