取引相場のない株式の評価方法の見直し(国税庁)と事業承継における課題

はじめに

8月20日に国税庁より、これまでの議論を踏まえた上での取引相場のない株式の評価の見直しの方向性が公表されました。

(参考:国税庁ホームページ)

https://www.nta.go.jp/about/council/nai-hyoka/20260820/pdf/05shiryo_kabukaigi.pdf

令和10年からの改正が見込まれている法人の株式出資の評価方法について、改正の方向性と事業承継における課題について見ていきたいと思います。

評価方法の見直しの方向性

一言でいえば、従来の評価方法に比べて非常に評価方法が簡単になると考えられます。

理由としては、従来は法人の資産・負債を相続税評価額で評価しなおす必要があったのに対し、公表された方向性では継続企業を前提として「簿価」で評価する、つまり決算書の数字をそのまま使う方向とされているからです。

新たな評価方法の方向性は下記のとおりです。

「簿価純資産±数年分(5年分)の残余利益の現在価値合計」

上記のような評価方法への見直しにより、法人税申告書等(決算書の直近の純資産額と数年分の当期純利益)から容易に株価を把握することが可能になるとしています。

(国税庁ホームページ「取引相場のない株式の評価に関する 有識者会議(第5回)資料」より)

その他の見直しの方向性は下記のとおりです。

 ⇒非経常的な損益を適切に修正したうえで、法人の正常利益により評価することにより、評価額の恣意性を排除する方向

事業承継への影響

今回の見直しが行われた場合、複雑な評価を行わなくても納税者自身が評価額を把握することができるようになり、将来の法人の方向性や対応を考えることができるようになると考えられます。

ただし、事業承継(特に親族内承継)における納税面での問題点の本質は、「納税により事業承継と経営改善が阻害される」ことにあります。つまり、経営が順調で財務内容が健全であるほど承継時の納税額が大きくなるにも関わらず、法人の株式出資は換金することが困難であることから納税額が持ち出しになることや、後継者が経営改善をすればするほど先代がもつ株式出資の評価が高くなり将来の納税額が増えるため経営改善を阻害することに対する対策が必要です。一部報道では、「今回の見直しにより中小・零細企業は納税額が軽減される」とありましたが、中小零細でも純資産や損益が健全な法人は、評価方法が変わることにより評価額が高くなり、納税が高くなる可能性もあります。

一般法人では令和9年までの特例事業承継税制が令和10年以降どのような制度になるのかで対策方法が大きく変わってきます。

持分あり医療法人では、令和11年までの制度である認定医療法人制度の活用により、承継や経営改善を阻害されることなく承継を行うことができると考えられます。

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