持分あり医療法人を現理事長の親族ではない法人内の医師に承継することになったケースについて、これまで複数の方々から同様のご相談をいただきました。ご相談内容は下記の2点です。
ここで、上記の複数のケースで共通しているのが、承継時の買い取り資金を工面するために、医療法人から後継者に数億円の貸付をしているということです。
先日来ご案内のとおり、奨学金などの従業員全般に対する福利厚生目的ではない役員貸付金は原則として配当類似行為として医療法第54条に抵触する可能性があり、都道府県からの指導の対象になることが多々あります。後継者が分院展開をするために定款変更の認可申請をした場合に、役員貸付金の解消(もしくは解消案や誓約書等)を求められることもあります。
また、出資持分の相続税を回避するために認定医療法人制度を活用するにしても、上記のような役員貸付金が残っている場合は認定を受けることができません。退職金との相殺や出資持分の払戻との相殺を検討しても、(役員貸付金が減るだけで)現金が手元に入ってこないところに多額の所得税の納税が発生してしまうため、納税自体が出来ない状況に陥ってしまいます。
医療法人に限らずすべての事業体は、「親族内承継」「第三者承継」「廃業」のうちのいずれかの選択を将来必ず迫られることとなります。
地域医療の維持や患者様への永続的な医療介護の提供、従業員の雇用の場の維持等を考えるとできるだけ廃業を避けて承継をすることを模索することになりますが、親族に医師や歯科医師がいない場合、又は医師又は歯科医師である親族が承継しない場合は、第三者承継の方法を選択することになります。
ここで第三者承継には、純粋な第三者承継であるM&Aだけでなく、法人内の親族外の院長などに承継する「法人内第三者承継」も選択肢の1つとなります。承継に際して医療法及び将来の相続税に配慮したスキーム選択と資金調達を行い、将来思わぬ問題を抱えることにならないようにご注意ください。