最近の報道では病院もクリニックも赤字が増えていると言われていますが、私の肌感覚では、承継を成功させて経営拡大していく医療法人と、赤字の医療法人の「二極化」が進んでいると感じます。
ただ、病院でもクリニックでも、赤字ではあるものの純資産が多額である持分あり医療法人は多く存在します。例えば損益が赤字で純資産が10億円というような病院やクリニックは「赤字なのに出資の相続税が高くなる」という構造が出来上がってしまいます。これは「比準要素数1の会社」という相続税特有の評価方法に起因しています。簡単に言うと3期連続赤字なら出資の評価が跳ね上がるというものです。さらに、その法人の純資産の内訳がキャッシュではなくほとんど固定資産で、相続税の納税資金に困るというケースもあります。
会計検査院の指摘により、近い将来類似業種比準価額方式の計算も高くなる様に見直されると言うのが大半の予想ですが、そのような見直しが行われると出資に対する相続税がさらに高くなることが予想されます。
「コンビニより多い」と言われる歯科医院ですが、特に地方では今後どんどん歯科医院は減っていくと予想されます。
単純計算で歯科医は毎年1,000人ずつ減っていくことになります。昔は3,000人の入学定員だったのが現在の歯科医国家試験合格者数が2,000人に絞られています。これに対し70代以上の歯科医が毎年約3,000人引退することになります。
承継の有効な方法の一つである親族内承継で、歯科の持分あり医療法人の後継者の方から「自分が承継してから法人を拡大したことにより、父の所有する出資の評価が高くなりすぎたので認定医療法人制度を使いたい」というご相談を何件かいただきましたが、歯科の医療法人では認定医療法人制度を使えないケースが大半です。歯科医院は「いかに自由診療を増やすか」が重要な経営戦略の一つですが、認定医療法人制度は6年間自由診療を2割未満に抑える必要があり、歯科医院の経営戦略と認定の要件にミスマッチがあるためです。認定医療法人制度を使うと非課税になるところ、歯科の持分あり医療法人では数億円の納税が発生するところが大半です。歯科医師会からの要請などの動きがあればこのミスマッチが見直されるかもしれませんが、今のところそのような動向はありません。
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