通常、資本金1億円以下の法人の場合は、年800万円までは交際費が損金算入されますが、資本金(出資金)のない「持分なし医療法人」については資本金(出資金)による判定に変えて、別の金額を用いて交際費の損金算入の判定をします。
具体的には「(総資産の帳簿価額₋総負債の帳簿価額-当期利益(or+当期欠損金))×60%」の金額が1億円を超えると一部の交際費を除いて全額損金不算入となります。
つまり持分なし医療法人の純資産額が高くなりすぎると、法人税の計算上交際費が損金に算入されなくなります。
つまり、貸借対照表の純資産の金額が166,666,666円以下かどうかを確認する必要があります。特に下記のような医療法人は注意が必要です。
なお、基金拠出型医療法人の場合の基金の金額を上記の算式の「総負債の帳簿価額」に含めるべきか否かについては、基金は総負債に含めて計算し、基金返還後の代替基金は総負債に含めずに計算するものと考えられます。こちらについては一般社団法人についての国税庁質疑応答事例が参考になります。
▼国税庁質疑応答事例「一般社団法人に係る交際費課税上の「基金」の取扱いについて」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/15/06.htm
役員等に対する退職給付引当金を計上することにより、純資産の金額を下げるのも対策の1つです。
また、一定の要件を満たすことにより、1人1万円以下の社外飲食費は全額損金になり1人1万円超の社外飲食費も50%が損金になります。
なお、持分なし医療法人で内部留保が高くなりすぎると交際費自体が使えなくなると誤解される方が中にはいらっしゃいますが、交際費の使用の可否自体は変わりません。税金の計算上で損金扱いされなくなるということです。
今回のテーマとは直接関係ないですが、基金を返還した場合の会計処理は下記のとおりです。
例)1,000万円の基金を返還した場合
基 金 1,000万 / 現預金 1,000万円
繰越利益積立金 1,000万円 / 代替基金 1,000万円
また、持分あり医療法人が持分なし医療法人へ移行した場合の会計処理は原則として移行時の純資産は全て設立等積立金てして処理します。
例)出資金1,000、繰越利益100,000の持分あり医療法人が認定医療法人制度を利用して定款変更の認可を受けて持分なし医療法人へ移行
出 資 金 1,000 / 設立等積立金 101,000
繰越利益積立金 100,000 /
※この場合法人税の検算が1,000だけ合わなくなります。
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