はじめに
前回に引き続き、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人への移行した事例をご紹介させていただきます。
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事例5:毎期多額の利益が出ている持分あり医療法人(内科クリニック)
1. 医療法人の概要
- 関東圏にある内科クリニック
- 純資産:1億円
- 後継者候補として数年前から長男が当該医療法人で勤務、現在は分院を設立してそこで理事兼院長に就任している。
2. 出資持分の承継対策を活用すべきであった理由
- 現在の出資持分の相続税評価額はそれほど大きくないが、毎年1億円近い利益が出ることが予想されたため将来株価が高額になり多額の相続税が発生することが予想された。
- 特に長男が院長として運営している分院の経営が順調であり、医療法人の利益の大半を分院の利益が占めている。
3. 弊所からのご提案
⑴ 承継における納税の問題点として下記の2点をご説明した。
- 出資持分は現金ではなく換金することも難しいため、相続の際にご長男を含む相続人は別途納税資金を準備する必要がある。
- 後継者であるご長男が運営する分院が好調であることは望ましいことではあるが、好調であればあるほど将来の相続税の納税額が増える(ご長男自身が自分で納税額を増やしている)状況である。
⑵ 対策として下記の3つの方法をご提案した。
- 理事長への退職金の支給、修繕や固定資産の購入、法人での生命保険の加入により出資持分の評価額を引き下げて、理事長からご長男への出資持分の暦年贈与又は精算課税贈与
- 理事長への退職金の支給、修繕や固定資産の購入、法人での生命保険の加入により出資持分の評価額を引き下げて、持分なし医療法人への移行
- 認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人への移行
4. どの方法で対策することとなったのか?
- 上記3⑵の方法のうち、①と②については理事長が退職しなければならないことが問題となった。理事長としてはまだまだ現役で働きたい、生涯現役でいたい、いずれは理事長職を長男に譲るつもりであるが今すぐに譲るつもりはないとのことであった。
- 理事長退職金の支給以外に大きな効果がある株価引き下げ方法はない、理事長の引退時まで待っていたら毎期の利益が積みあがって純資産が10億円まで積みあがる可能性もあったため、認定医療法人化による持分なし医療法人への移行を選択することとなった。
5. お客様のお声
- 理事長はまだまだ生涯現役でやっていきたい、長男はよりよい経営を目指して患者さんに喜ばれるようにやり方を変えていきたいという意思があり、それぞれの意見がお互いぶつかり合うことが多かった(分院を開設した理由の1つでもある。)。認定を進めるうえでお二人のお話合いの場に同席したり、間に入ってお互いの意見をくみ取りきちんと相互に伝達することにより、2人のみで直接意見をやり取りするよりも心理的ストレスは減り、スムーズに物事が決まるようになった。
- 認定について誤解をしていた部分があったが、多くの事例やメリットデメリット、他の方法との比較を説明してもらうことが出来、出資持分の承継について理解できた。
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