はじめに
前回に引き続き、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人への移行した事例をご紹介させていただきます。
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事例4:M&Aと親族内承継のいずれを選択するかを迷われていた医療法人の事例
⑴ 医療法人の概要
- 首都圏にある持分あり医療法人(精神科病院、介護老人保健施設がそれぞれ1施設ずつあり)
- 純資産:約20億円
- 現理事長は先代から医療法人を承継した2代目である。現理事長のご子息は医学部に在学中であるが、将来当該医療法人を承継するかどうか不明である(これまで具体的に親子で承継について話し合う機会を持てていない。)。
- 昨今の診療報酬の改定や人材不足等による病院経営の悪化もあり、当該医療法人をご子息に承継してもよいものか現理事長は悩まれていた。
⑵ 認定医療法人制度を活用すべきであった理由
出資持分の相続税評価額がかなり高額であることから、その対策として先代から現理事長へ暦年贈与で少しずつ出資持分を移していた。出資持分の贈与による毎年の贈与税の支払いが多額となるため、理事長報酬の増額をして贈与税を納税していた。結果的に贈与税と理事長報酬に対する所得税が高額となり、法人にも個人にも手元に資金が残らず資金繰りが厳しい状況に陥っていた。
⑶ 弊所からのご提案
将来M&Aをするのか医学部在学中のご子息に承継するのか悩まれたいたため、弊所から下記の点をご説明した。
- もしM&Aが成立する前に先代や現理事長に相続が開始すると数億円の多額の相続税が一時に発生するが、現状その納税資金が足りない状況である
- 出資持分がなくなってもM&Aが出来なくなるわけではない(役員退職金による対価の清算の方法もあり、医療法人のM&Aではむしろこちらの方法を採用することが多い)
- 持分ありのまま親族内承継かM&Aか決めきれないままお亡くなりになって多額の相続税が発生するのが相続税の納税の観点からは最も最悪の選択、そうならないようにいったん持分なし医療法人へ移行しておき出資持分に対する相続税が課税されない状態にしてからM&Aをするか親族に承継するか時間をかけて検討するのがベターな選択であると考えられる
⑷ お客様の反応
先代の体調に不安があり、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人へ移行してから将来の承継方法を検討することとした。出資持分の暦年贈与を行う必要がなくなったため、理事長報酬も減額し、贈与税や所得税の納税も減り、法人の資金繰りも改善した。節税対策をしているつもりが資金繰りが悪くなるという悪循環を解消出来た。認定の対策を進めていく中で、自院の問題点も浮き彫りになった。
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