はじめに
「純資産額が多額(概ね2億円~3億円以上)」であり、「親族内承継」を行う予定である持分あり医療法人は、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人への移行をすべきかどうか1度は検討すべきであると考えられます。
後継者が医療法人の経営を良くすればするほど将来の納税額が高くなる、出資を換金できないため別途納税資金を準備しないといけない、その納税資金が億単位になるという問題を認定医療法人制度を使えば解決することが出来ます。
今回は、実際に認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人に移行したことのより上記のような問題点を解決した事例をいくつかご紹介させていただきます。
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事例1:純資産15億円の病院の事例
⑴ 医療法人の概要
- ケアミックス病院(300床)と介護老人保健施設を有する東北の持分あり医療法人
- 純資産:約15億円
- 理事長の長男が当該医療法人を承継する予定、現在は理事及び病院長として当該医療法人の業務に従事
⑵ 対策が必要な理由
- 純資産が多額で出資の相続税評価額も大きいため承継に際して多額の納税が予想されていた。
- 50代の長男が当該医療法人を承継することが決まっているが、80代の理事長に持病があり承継対策を急ぐ必要があった。
⑶ 認定による持分なし移行対策についての障壁
- 数年前に当該医療法人の顧問税理士に認定医療法人化による持分なし医療法人への移行を依頼していたが、その顧問税理士には経験がなくやり方がわからず、ほとんど進んでいない状況であった。
⑷ どのようにして移行出来たのか
- 当該医療法人から顧問税理士に再度催促したところ「経験がないため難しい、慣れている税理士に依頼してほしい」と回答があり、弊所にご依頼。
⑸ 移行後のお客様の声
- 相続財産のほとんどが出資と不動産であり、しかも納税額が数億円と予想されていたため、そのままでは相続税の納税が出来なかった。移行後に理事長がお亡くなりなった際に、ほとんど相続税が発生せず大幅に相続税が軽減されて無事納税することができた。
事例2:小児科クリニックでの事例
⑴ 医療法人の概要
- 小児科を標榜するクリニック1施設を有する都内の持分あり医療法人(いわゆる一人医師医療法人)
- 純資産:約3億円
- 理事長の長男が専門医を取得したことを契機に将来について親子で話し合い、長男が数年後に当該医療法人を承継することとなりその準備をすることとなった。
⑵ 対策が必要な理由
- 現状でも億近い納税が予想されていた。
- 経営は順調であり、承継した場合にさらに増益が予想されるため、このままにしておくと納税額は毎年どんどん増加していくと予想された。
- せっかく当該医療法人を承継する決断をした長男に「納税」という、いわゆる負債を負わせることになる状態を回避したかった。
⑶ 認定による持分なし移行対策についての障壁
- 顧問税理士の反対:理事長の退職時に役員退職金を支給すれば対策可能と理事長に説明していた。しかしながら実際の承継は数年後であり、現在医師は理事長1人であることからすぐに退職することはできず、将来退職のタイミングではさらに純資産額は多額になると予想されていた。純資産額が多額であることから、役員退職金に対しても多額の納税が生じると予想された。
- ワクチン接種や検診の収入が全体の収入の4割を占めており、認定の要件を満たすか不安であった。
⑷ どのようにして移行出来たのか
- 当該医療法人の理事長・奥様・ご長男への認定のご提案の場に顧問税理士も同席していただき、ご意見を賜るとともに現状の対策案と認定による対策案の比較やメリットデメリットを丁寧に説明してそれぞれに納得していただいた。
- 当該医療法人のワクチン接種や検診収入のほとんどが認定の要件判定上は保険診療等に含むものであり、要件には抵触していなかった。
⑸ 移行後のお客様の声
- 長男に医療法人を継がせることにより、相続税という納税を負わせる、いわゆる負債を負わせる状況になってしまうことに後ろめたさがあったが、その問題が解決し心置きなく長男を後継者に迎える準備ができることとなった。
- 持分を放棄したら後戻りはできない、財産が国に没収されるとのことであったが、きちんと説明を受けて理解をすれば概ね勘違いの部分も多く事前の対策も可能であることが分かった。
事例3:耳鼻咽喉科クリニックでの事例
⑴ 医療法人の概要
- 耳鼻咽喉科を標榜するクリニック1施設を有する九州の持分あり医療法人
- 純資産:約5億円
- 数年前に理事長の長男が大学病院を辞めて当該医療法人の理事・副院長に就任、将来は当該医療法人を承継することとなっている。
⑵ 対策が必要な理由
- 現状でも億を超える納税が予想されていた。
- 理事長と長男の2診体制であり、特に長男の患者が多く、毎年億近い税引後利益を計上しており、このままにしておくと納税額は毎年どんどん増加していくと予想された。
⑶ 認定による持分なし移行対策についての障壁
- 認定制度が出来た際に、理事長夫妻が認定制度について多数のセミナーを受講し多くの専門家から意見を聞いたが、説明を受ければ受けるほど意味が分からない状況であった。
- 顧問税理士からは認定制度はもちろん、承継対策そのもののご提案もなく、日々の決算申告業務のみに従事するのみであった。
- キャッシュリッチな法人であり、そのままでは認定の要件(遊休財産要件)に抵触していた。
⑷ どのようにして移行出来たのか
- まずはご長男を含むご子息全員に、親族内承継における問題点(出資を換金できず別途納税資金を億単位で準備する必要がある、長男が経営を頑張れば頑張るほど将来自分が払わないといけない納税額が増えていく)をご説明して問題点を認識していただいた。
- ご子息からご両親(現理事長夫妻)に概要をご説明していただいて、弊所からの認定制度のご説明をさせていただく機会を設けていただいた。
- いくつかのスキームを構築することにより、遊休財産要件に抵触することなく厚生労働大臣の認定を受けることが出来た。
⑸ 移行後のお客様の声
- 理事長夫妻:認定について詳しい専門家がほとんどおらず、説明を聞いても明確な理解を得ることが出来ていなかったが、弊所からの認定制度のメリットデメリットの説明により明確に理解することが出来た。
- 後継者である長男:将来の億単位の納税を回避することができ、承継に対する不安が払拭された。
- 法人経営の方針に理事長と長男の意見の違いがあったが、弊所がお互いの意見を聞きながら承継対策を前進してもらえた。
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