医療法人のM&A・事業承継と生命保険

はじめに

医療法人(特にクリニック)のM&A・事業承継の場面において生命保険について検討・検証する必要がある事例は結構多いと考えられます。

下記のような場面における事例をご紹介させていただきます。

  1. M&Aにおけるスキーム選択と生命保険
  2. 承継後の買手や後継者の生命保険
  3. 相続対策として

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M&Aにおけるスキーム選択と生命保険

「役員報酬の課税は最高55%、株式譲渡益の課税は20%、したがって役員報酬を抑えてイグジットの際に株式譲渡でキャッシュを得たほうが手取りが多い」として、在任中の役員報酬をできるだけ抑えて、M&Aの際の出資の譲渡での対価を大きくしようとされている方がいらっしゃいます。

このやり方には1点抜け落ちている部分があります。それは、出資の譲渡対価は法人税課税後の税引後利益が毎年上乗せされたものであるということです。

上記の税率の話で行くと、役員報酬55%と比較すべきなのは20%ではなく、仮に法人税の実効税率が30%とした場合に「30%+(1‐30%)×20%=44%」と比較すべきとなります。

イグジットの場面で法人税の課税を免れた純粋な20%にできるだけ近づけるための方法の1つとして、生命保険による課税の繰り延べがあります。例えば仮に全損タイプ、解約返戻率100%の生命保険(そんな保険は今はないですが、医療法人は加入できないですが倒産防止共済であれば可能です)に加入して、M&Aの際に譲渡対価を退職金で清算すれば20%に近づけることが出来ます。

翻ってクリニックのM&Aの場面を検討してみましょう。売手が節税目的で医療法人で長期平準定期保険やハーフタックスの養老保険を契約している場合も多くあります。その場合のM&Aのスキームとして全額出資譲渡を選択した場合は生命保険の解約返戻金の保険差益に対して上記の法人税の課税が行われるため、譲渡対価には本当は貸借対照表に計上されていない簿外債務として保険差益に対する未払法人税を加味する必要があります。これに対して退職金による清算のスキームを選択する場合、「保険差益<退職金」というケースも多いため、この場合は繰越欠損金による将来の法人税の軽減額を簿外資産として譲渡対価に織り込む必要があると考えられます。

承継後の買手や後継者の生命保険

医療法人のM&Aや親族内承継で事業承継後の状況を拝見すると、ほとんどの医療法人で後継者のための生命保険が検討されていません。

M&Aの後しばらくは役員退職金による繰越欠損金で法人税がかからないため生命保険を検討する必要性が薄いことや、保険会社や顧問税理士が先代理事長と同年代であることから後継者に適切にご案内が出来ていないことが理由として挙げられます。

もしもの時の保障、退職金準備、変額保険等でのキャッシュリッチな法人のリスクヘッジ(医療法人は投資が出来ないので円で塩漬けにならないように)等を検討する必要があると考えられます。

相続対策として

こちらのお話は主に親族内承継に関連するお話となります。

<個人の相続対策>

医療法人の後継者には親御様である先代理事長からの相続財産として換金性のない資産が集中しがちなので、納税資金確保と相続人の間で争いにならないように親御様の個人の保険契約として無告知の一時払終身等での納税資金の確保等を検討する必要があります。

また既存の個人の生命保険契約の受取人が配偶者のみの場合は、お子様方に受取人を変更することも検討する必要があると考えられます。

<認定医療法人の要件適合のため>

<認定医療法人化しない場合の出資持分の株価引き下げとして>

認定医療法人化しない場合の出資持分の株価引き下げとして下記のような方法が考えられます。

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