はじめに
医療法人のM&Aにおけるスキームとして出資持分譲渡よりも役員退職金による清算の方法がとられることが多いと考えられます。
その背景と、支払い原資をどのように準備するのかの事例についてご説明させていただきます。
Xの投稿もぜひご覧ください
大規模M&Aの場合
医療法人のM&Aにおいて、譲渡金額が数億円〜数十億になる場合、金額の規模的にこれから開業予定の個人の勤務医が買手となることは難しいので、大手医療法人やファンド等が買手となることが多いと考えられます。
特に売手である医療法人が資産の大部分が固定資産である病院である場合や、EBITDAが高くのれん代が高額になる場合は多額の資金調達をする必要があります。
- 資産の大部分が固定資産の場合:対価として医療法人から退職金を支給する原資(キャッシュ)が足りず、別途資金調達が必要
- のれん代が高額の場合:計算上純資産は売手法人の資産から賄うことが出来るが、のれん代は別途資金を用意する必要がある
医療法人の出資持分を買手法人が取得することの可否
医療法人の出資持分を株式会社等の営利法人や医療法人が購入することが出来るかについてですが、下記のような問題が生じます。
- 株式会社等の営利法人:医療法人の出資を取得することはできるがその社員になることは出来ない(東京弁護士会会長あて厚生省健康政策局指導課長回答)。従って売手法人の出資を取得した買手では配当を受け取ることも退社による持分払戻請求をすることも出来ないので、次の出資の売却の機会まで投下資本を回収することが出来ない。
- 医療法人:法人社員が持分を持つことは、法人運営の安定性の観点から適当ではない(医療法人運営管理指導要項)。
出資持分譲渡か役員退職金支給か
上記の通り、営利法人であれ医療法人であれ、「出資者+社員」の両方の地位を併せ持つことが出来ないため(退社による持分払戻請求権を行使できないため)、買手としては出来るだけ出資の取得価額を圧縮できるように、退職金で対価を支払う方法を優先することになります。
- 例1)営利法人が買手の場合:営利法人が1円に圧縮した出資持分を購入し、買手法人の関係者が売手医療法人の社員と理事の過半数に就任する
- 例2)大手医療法人が買手の場合:買手医療法人グループの経営者個人が出資を購入することになる場合が多いが、その際の持ち出しをできるだけ少なくするために、出資持分を1円に圧縮したうえで買手側の個人が購入し、買手医療法人の関係者が売手医療法人の社員と理事の過半数に就任する
資金調達の方法
M&Aの対価の原資(すなわち役員退職金の支払原資)の調達方法としては、対象となる売手医療法人で借入をしたり、買手である営利法人が手元資金や資金調達をした資金を売手医療法人に貸付をする方法が考えられます。
- 例1)営利法人が買手の場合:買手が銀行借入やSPC設立等による資金調達を行い、売手医療法人への貸付や売手医療法人が保有する不動産(病棟・土地・介護施設等)の購入を行う。売手医療法人は借入資金や不動産売却資金を元手に役員退職金を支給。不動産購入の場合はその後不動産賃貸を行う。
- 例2)医療法人が買手の場合:売手医療法人で資金調達を行って役員退職金を支給する。退職金支給目的としての銀行借入は困難なケースもあるので、その後の事業計画を綿密に作成する必要がある。
個人が買手となる場合
買手が個人の勤務医の場合も、個人での持ち出しを出来るだけ少なくすることと、法人での節税(繰越欠損金の活用)のため、出資持分の取得費を出来るだけ圧縮して退職金に寄せる方向となります。
お問い合わせ
本稿についてのご質問や医療法人の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡ください。
お問い合わせ