医療法人の出資者がお亡くなりになった場合、相続税の申告期限までに厚生労働大臣の認定を受ければ出資者の相続人の相続税を大幅に軽減することが出来ます。
相続開始後の認定のご支援も何件か請け負わせていただいた経験から、こちらについてご説明させていただきます。
相続税の額は本来被相続人の相続開始後の財産を基に計算されるため、医療法人の出資者が亡くなった場合はその出資者の保有していた出資持分も含めて相続税の計算を行うことになります。
理事長や創業者である場合、出資の評価額も億単位になっていることから納税額もかなり大きくなり、親族が医療法人を承継している場合は換金もできないことから相続税の納税資金を相続人が自分で準備する必要があります。
被相続人が納税資金に見合う現金の保有や保険契約を行っていれば納税も可能ですが、相続財産の大半が出資である場合は納税資金を相続人が用意しなければなりません。
医療法人の出資持分の評価額が高くても医療法人の保有する資産の大半が固定資産であり現預金が少ない場合、死亡退職金や払戻請求による納税資金の準備も難しく、銀行から借り入れをして納税をするといったケースもあり得ます。
原則は前述のとおりですが、相続開始後相続税の申告期限までに厚生労働大臣の認定を受けることにより、出資持分に係る相続税を大幅に軽減することが出来ます。
相続税の申告期限までに認定を受け申告期限後に持分なしに移行した場合は納税猶予、いずれも相続税の申告期限までに完了した場合は税額控除となります。
厚生労働省の認定医療法人制度についてのホームページにも下記の記載がある通り、実務上の感覚では相続案件での認定は優先してかなり急いでくれる傾向があります。
「既に相続が発生しており、納税猶予等の適用を希望される場合は、税務署への申告期限(相続の発生から10ヶ月以内)までに認定を受ける必要がありますので、申請時に「相続が発生している旨」と「相続税の申告期限」をご連絡ください。」
▼厚生労働省認定医療法人制度ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000205627.html
厚生労働省の「「持分なし医療法人」への移行に関する手引書」より具体例をご紹介させていただきます。
こちらの具体例では2億円の出資持分評価額について4,860万円の相続税が軽減されています。
9,180 万円 - 4,860 万円 = 4,320 万円(納税額)
(出資持分を全て放棄した場合に免除)
厚生労働省の「「持分なし医療法人」への移行に関する手引書」には、前述の具体例のケースで「相続開始前」に持分なし医療法人へ移行していた場合の税額計算も下記のとおり紹介されています。
この場合納税額が下記の通り1,220万円(持分なし移行による軽減額:7,960万円)になり、相続開始後に認定を受けた場合に比べて3,100万円も最終的な納税額が少なくなります。
適用される税率の差によるものですが、ゆとりをもって手続きを進めるためにも、不慮の相続等が発生してしまう前に、予め持分なし医療法人への移行を終えておくことが重要です。
既に出資持分を放棄しているため、課税遺産額は1億円のみ。
「数年前の相続ですでに〇億円の相続税の納税をしちゃったけど、この制度を知っていたら活用していたのに...」という医療法人の後継者の方がいらっしゃいました。
このようなケースでは相続税の申告書を作成した税理士や相続対策を行っていた顧問税理士が損害賠償請求を受けることも考えられます。
税理士の先生方は医療法人の出資持分を保有されているクライアントには必ず認定医療法人制度について生前と相続開始後に説明をし、そのことを記録に残す必要があると考えられます。
医療法人の出資者をお客様にお持ちの税理士の先生方との協業も随時募集しております。
また、本件にかかわらず医療法人のM&Aや認定医療法人化、その他の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡いただけますと幸いです。