【医療法人の事業承継】医療法人の持分の有無の確認方法

はじめに

最近、医療法人をお客様にもつ金融機関の方や勤務医の方から、「医療法人の持分の有無の確認方法を教えてほしい」とのご質問を多くいただきます。

すべての医療法人は持分「あり」か「なし」かに分類されますが、持分の有無は親族内承継はもちろん、第三者承継でも譲渡スキームを検討する上での重要な要素の1つです。

そこで今回は、医療法人の持分の有無の確認方法についてご説明させていただきます。

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医療法人の持分の有無の確認方法:自治体ホームページから確認

可能であれば対象となる医療法人関係者に直接確認すればよいのですが、公的に確認する方法がいくつかあります。

そのうちの1つが自治体ホームページで確認する方法です。

医療法人の事業報告書等(事業報告書、財産目録、貸借対照表、損益計算書、監事の監査報告書)は都道府県庁等で閲覧することが可能です。

都道府県庁や保健所へ直接訪問して閲覧する方法の他、ほとんどの自治体ではホームページから閲覧することが可能です。

こちらの「事業報告書」の「⑴名称」の下の①に持分のあり・なしの記載があります。

その他、設立年月日や役員の名称、分院や付随業務、純資産額や売上・利益の概要を知ることが出来ます。

主な都道府県における医療法人の事業報告書等の閲覧ページは下記のとおりです。

▼東京都ホームページ
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/iryo/hojin/etsuranonline

▼愛知県ホームページ
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/imu/houjinkessan6.html

▼大阪府ホームページ
https://www.pref.osaka.lg.jp/o100020/iryo/hojin/kessan_etsuran.html

▼兵庫県ホームページ
https://web.pref.hyogo.lg.jp/kf15/iryouhoujinetsuran.html

▼福岡県ホームページ
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/iryouhoujin-fukuoka-iryoshido.html

▼福岡市ホームページ
https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/iyakumu-eisei/health/iryouhoujin-jigyouhoukoku-etsuran/iryouhoujin-jigyouhoukoku-etsuran.html

なお、自治体によってそのままホームページで事業報告書等を検索できるところもあれば、自治体担当者からメールで提供してもらう方法をとるところもあり、対応は様々となっています。

医療法人の持分の有無の確認方法:登記情報から確認

なんらかの事情により自治体のホームページで事業報告書等を閲覧できない場合は、登記情報提供サービスから登記簿謄本(全部事項証明書)を取得して、そこに記載されている内容から推測することになります(なお、取得には331円の手数料が必要です。)。

▼登記情報提供サービスホームページ
https://www1.touki.or.jp/gateway.html

持分の有無の直接の記載はありませんが、「法人成立の年月日」の記載がありますので、その年月日が第5次医療法改正(平成19年4月)前後であるかどうかで推測します。

平成19年4月1日以降設立認可申請した医療法人はすべて持分「なし」医療法人となります(なお、認可申請から法人成立までには一定のタイムラグがあります。)。

それより前に設立認可申請された医療法人は持分「あり」の可能性が高いですが、もともと持分なし社団や財団として設立されていたり、認定や社会・特定医療法人化により持分ありから持分なしに移行している可能性もあります。

なお、登記簿謄本にはこれ以外にも分院や付帯事業、理事長の氏名や住所、決算期や純資産額が記載されています。

事業報告書等や登記簿謄本で確認すべきこと

事業報告書等や登記簿謄本から、持分の有無だけでなく、下記の点も確認することにより、事業承継におけるその医療法人の状況をより知ることが出来ます。

  1. 純資産額:純資産額がそのまま将来の相続財産の評価額となるわけではないですが、一定の目安とはなります。当面の後継者や親族が負うべき相続税額を推定することがある程度出来ます。
  2. 毎期の純利益・純資産額の毎期の推移:過去どのような推移で純資産額の増減があるかを知ることにより、今後何年後に相続税がどのくらい増加するかをある程度推定することが出来ます。

また、M&Aの場面で先に事業報告書等や登記情報を確認することはあまり想定しにくいですが、M&Aにおいても時価純資産額+修正後当期純利益の1~2年分が譲渡金額となる場合、ある程度参考になると思われます(ただし、M&Aの場面で実際利用するためには、公表されている簿価を時価に直したり、損益を修正する必要があります。)。

最後に

持分の有無の確認方法がわかりにくい場合や、本件にかかわらず医療法人のM&Aや認定医療法人化、その他の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡いただけますと幸いです。

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