【医療法人M&A】承継時に気を付けたい持分払戻リスク

はじめに

持分あり医療法人をM&Aで第三者に承継する場合や、親族に承継する場合、出資持分の払戻請求について大きなトラブルになることがあります。

リスクの内容を把握しトラブルを未然に防ぐためにご留意いただきたい事項を記載させていただきます。

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持分あり医療法人での持分払戻リスクとは?

持分あり医療法人における持分払戻リスクとは、例えば経営者以外の方から出資持分の払戻請求を受けることのリスクです。

持分あり医療法人の出資者は、医療法人に対して出資持分の払戻請求をすることが出来ます(※)。

※より正確に申し上げると、出資者が社員の地位も持っている場合に、退社や死亡により社員の資格を喪失した場合に持分の払戻請求をすることが出来ます。

この場合の払戻請求権の金額は、当初出資額ではなく「時価」となります。

例えば医療法人の設立時に創業者一族ではない第三者に少額の出資をしてもらったがその出資者がすでにお亡くなりになっている場合や、創業者(設立当初の出資者)がお亡くなりになり経営に関与していない親族が出資持分を相続した場合にトラブルになる可能性があります。

設立時に少額の出資をしてもらった第三者がすでにお亡くなりになっている場合

上記でも記載したとおり、出資持分の払戻請求を受けるためには、社員資格を喪失する必要があります。

退社という自発的な意思表示の他、死亡によっても自動的に社員資格を失うこととなります。

つまり、少額の出資をした第三者が社員でもある場合、その方がお亡くなりになった時点で相続人が医療法人に対して時価の払戻請求権を相続により取得していることとなります。

経営に関与していない親族が出資持分を相続した場合

この場合も上記と同様に、相続人にである親族が医療法人に対して、その時の時価で出資持分の払戻請求権を取得することとなります。

トラブル管理の方法

医療法人の役員・社員・出資者の変遷や現状は、それぞれの名簿を作成して常時適切に管理する必要があります。

特に、役員については役員変更届を都道府県に提出することから現状を把握しやすいですが、社員や出資者については設立認可後は官庁に届け出ることはなく基本的に法人内で変遷を管理することとなります。

医療法人を承継する際に上記のような事例によって払戻請求権が発生している場合は、その請求権を持っている方と話し合って、事前に払戻請求権について解決しておく必要があります。

また、認定医療法人化等による持分なし医療法人に移行する際に経営に関与していない出資者が存在する場合、その出資者がどの程度まで払戻請求権の放棄に応じてくれるのかを移行前に折り合いをつけなければ、持分なし医療法人へ移行することが出来ませんので注意が必要です。

払戻請求権の時効

社員の持分払戻請求権は債権に該当するため、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年で消滅時効を迎えます。

すなわち少なくとも社員の退社や死亡により持分払戻請求権が発生してから10年で時効となります。

なお、時効が来れば自動的に債権が消滅するわけではなく、実際に時効を成立させるためには援用手続きが必要ですので注意が必要です。

出資者が社員でない場合

出資者が出資持分の払戻請求を受けるためには、社員資格の喪失(除名・死亡・退社のいずれか)をすることが必要です。

逆に社員資格を持たない出資者は退社による医療法人への持分払戻請求権の行使はできません。

持分なし移行時に非社員である出資者が移行に応じない場合、他の出資者が一斉に持分放棄すれば、反対しているその出資者に莫大な贈与税負担が生じる可能性があります。

ただし、贈与税負担を受けた出資者は、その医療法人が解散した場合に残余財産の分配を受けることとなります。

最後に

本件にかかわらず医療法人のM&Aや認定医療法人化、その他の事業承継についてのご相談がございましたら、下記の弊所ホームページのお問い合わせフォームからご連絡いただけますと幸いです。

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