厚生労働大臣の認定を受けた医療法人は持分放棄の際に贈与税が課税されませんが、当然ながら認定を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。
今回は、認定の要件を「満たさない」場合の対策方法についてご案内させていただきます。
移行計画認定制度を利用する医療法人は、⑴社員総会決議があること⑵移行計画が有効かつ適正であること⑶移行計画期間が5年以内であることという要件に加えて、⑷運営に関して以下の8つの要件を全て満たす必要があります。
これらの要件については、認定を受ける時点だけでなく、持分なし医療法人への移行後6年が経過するまでの間、満たし続ける必要があります。
例えば美容を専門にされている医療法人や、自由診療に力を入れている歯科診療所、診療所に介護老人保健施設が併設されていて収入に占めるホテルコストや食費の割合が高い場合、上記の要件のうち⑷⑥の保険診療割合が80%以下となることが多く、認定の要件を満たさないこととなります。
その場合の方法としては、持分ありのままで暦年贈与や精算課税贈与により出資持分を移転させる対策のほかに、認定を受けずに持分なし医療法人に移行する方法も考えられます。
もちろん認定を受けていないことから、持分放棄時に医療法人にみなし贈与税は課税されますが、医療法人に対する経済的利益の額(=定款変更認可日における財産評価基本通達194‐2による評価額)を極力低くしたうえで持分なし医療法人に移行することにより、医療法人に対するみなし贈与税は課税されるものの、課税額を低く抑えることが可能となります。
もちろん持分なし医療法人への移行後は持分に対する贈与税や相続税は課税されません。
株価を下げる方法としては、理事長退職時の退職金支給や相続発生による死亡退職金の支給、生命保険の活用等が考えられます。
認定を受けられないのであれば無理に持分なしにするのではなく、持分ありのままで対策すればよいのでは?とのご意見をいただくこともありますが、下記の点では、できるだけ早めに持分なしに移行していただいた方が課税上は有利であるといえます。
①出資持分に対する相続税課税は、1回で済むのではなく2次相続、3次相続と半永久的に課税され続けますが、出資持分がなくなれば課税されるものもなくなるため、課税がなくなります。
②毎期順調に利益をあげている法人の場合、株価も毎期上がり続けるため、後回しにすればするほど課税額も大きくなりますが、早めに放棄することにより株価上昇による課税額上昇を防ぐことが出来ます。
持分なしへの移行について抵抗感がある医療法人の方や専門家も多数いらっしゃると思います。 しかしながら私の経験上正しく理解されていないことが多いため、まずは正しい知識を得た後にご判断していただく必要があると考えられます。
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