財務デューデリジェンスと認定医療法人の予備調査

M&Aの際に売り手の財務状況を調査するために財務デューデリジェンスを行います。
また、認定医療法人制度を活用する際にも、要件充足の調査として予備調査を行います。
いずれも財務内容や法人の規程関係の具備の状況等をチェックする点が共通していますが、異なる部分もあります。

今回は、これらの調査における意義や副次的効果についてご紹介させていただきます。

M&Aの際の財務デューデリジェンス

M&Aの際に売り手の財務状況を調査し、売手の財務内容に隠れた瑕疵がないかチェックする手続きが財務デューデリジェンス(DD)です。

売手と買手の基本合意書が締結された後に、最終契約前に買手が本人または専門家に依頼することにより行います。

主に直近3事業年度の決算書、申告書、総勘定元帳と進行期の残高試算表、月次推移表、総勘定元帳等及びその原資資料を基に財務内容を確認するとともに、売手の代表者、(情報開示されている場合には)経理担当者や顧問税理士へのヒアリングを行うことにより、リスクの洗い出しを行います。

スモールM&Aの場合は、売手の譲渡価額を「時価純資産+修正後当期純利益の1~2年分」として計算することが多いため、デューデリジェンスの過程でバリュエーションの修正を行う意味もあります。

認定医療法人制度を活用する際の予備調査

認定医療法人制度を活用する際に、申請前に要件を充足しているか調査を行うのが予備調査になります。

こちらも財務面の調査の範囲は直近3事業年度の決算書、申告書、総勘定元帳を基に、法人関係者にヒアリングを行います。

認定要件の1つの「遊休財産要件」は直近の事業年度の財務内容で判断することから、この要件を満たさない場合は進行期の財務内容も確認し進行年度で要件を満たすように改善をし、次年度のタイミングで申請を行います。

認定の要件を満たす場合でも、例えば後継者のための退職金の積み立てや保障のための法人契約の保険をこれまで全く検討されてきていなかったり、企業型確定拠出年金のご提案を受けられたことがないケースが多いため、認定の要件調査と合わせてこれらのご提案をすることにより、医療法人の経営者に喜んでいただけることが多々あります。

認定医療法人のご提案のために面談した医療法人にてM&Aのご依頼

金融機関からのご紹介で、医療法人の理事長に認定医療法人制度のご提案をさせていただいた際に、その理事長の親族に後継者候補はいないが、地域医療の維持や患者様への継続的な医療の提供、従業員様の雇用維持のために医療法人を存続させる必要があるため、親族外で医療法人を引き継いでくれる先を見つけてほしいと、M&Aのご支援のご依頼をいただくことがありました。

このように、医療法人の親族内承継特に認定医療法人制度と、第三者承継(M&A)は密接な関係にあるといえます。

最後に

今回は最近の事例を基に、とりとめのないお話をコラムとして掲載させていただきました。 医療法人の事業承継やDDを業務として取り組まれている専門家や金融機関のご参考になれば幸いです。

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