【認定医療法人】持分放棄に対する抵抗感、持分を所有していることによるメリットデメリット

はじめに:認定医療法人とは

認定医療法人制度とは、医療法人の事業承継の際に持分に対して課される相続税や贈与税を回避するための制度です。

持分ありから持分なしに移行する際に、本来であれば医療法人に課税される「みなし贈与税」を非課税で持分なし医療法人に移行(持分を放棄)し、その後の持分に対する承継課税を回避することが出来ます。

また、持分が分散することにより払戻請求を受けることによる医療法人の資金繰り悪化という経営リスクの回避や、無用な親族間の争いも回避することが出来ます。

ただし、持分を放棄することに対する抵抗感は当然あると思われます。

今回はその点についてメリットデメリットとともにご説明させていただきます。

持分放棄への抵抗感

事業承継の際の持分に対する相続税や贈与税の課税に対する対策として、認定医療法人制度を活用して持分なし医療法人へ移行する方法をご説明させていただく際に、ご自身の持分を放棄することに抵抗感を抱かれる先生方も多くいらっしゃいます。

ご自身が奥様や親族の方とともに大変な苦労を積み重ねて医院を運営されてきた証であり、最後にご勇退される際にその積み重ねてきたものを払い戻してもらえるという権利であることや、新たな持分あり医療法人の設立は認められないことから、その感覚は当然のものと思われます。

持分保有のメリット

持分を保有することによるメリットは以下の通りです。

  1. まず、社員の退社時に医療法人から出資持分に応じた払い戻しをうけることが出来ます。つまり、ご自身がこれまでの医院の経営で積み重ねてこられたものを払い戻してもらえるということです。
  2. M&Aの際のスキームの1つとして持分譲渡を行うことが出来ます。
  3. 平成19年4月以降、持分あり医療法人の設立は認められなくなりました。また、一度持分なしに移行してから、再度持分ありに後戻りすることも認められていません。

持分保有のデメリット

持分を保有する(放棄しない)ことによるデメリットは下記のとおりです。

  1. 将来持分の承継者に対して相続税や贈与税の課税が生じます。例えば現金や換金性の高い資産を承継したのであれば納税は可能で手残りもあり困りませんが、持分は市場性や換金性が乏しく、そこに納税が紐づいてくることから、いうなれば手残りのない負債を負わせることとなります。
  2. 例えば10億円の出資持分については下記の通りです。
    1. 相続時に約半分の5億円の相続税を納税
    2. 持分払戻時に10億円の払い戻しを受けるが、これに対して所得税(みなし配当課税)が約半分5億円課税

    結果的に、10億円の持分払戻を受けたことにより、納税が10億円必要であり、医療法人の残余財産が国に没収されたのと同じ結果となります。

  3. 持分の払戻には社員の退社が必要であり、社員としての医療法人の経営権を失うこととなります。
  4. 過度な持分払戻は医療法人の資金繰りの悪化による経営のリスクを招きます。
  5. 税金対策等で出資を分散して贈与した場合、後々の親族間の争いのもととなりかねません。

持分の考え方

確かに持分なし医療法人に移行した場合は、医療法人が解散した場合の残余財産が国等に帰属することになります。

ただし、持分なし医療法人に移行した場合であっても、ご自身のご勇退時や解散時に、持分に見合う金額を退職金で受領するという考え方もあります。

また、ご子息が開業されて医療法人成りされる場合は、持分なし医療法人しか設立することが出来ません。

つまり、持分を放棄するということは、言い換えれば、ご子息の医療法人と同じ状態になったということです。

© 2024 藤澤文太税理士事務所