医療法人が他の医療法人の出資を買い取ることは難しいため、買手が売手を吸収合併するケースも想定されます。
そこで、医療法人が他の医療法人をM&Aにより吸収合併する際の留意点をご説明させていただきます。
合併前の医療法人の持分の有無により、合併後の医療法人の類型が異なることとなります。
合併後も持分あり医療法人とするためには、合併前の医療法人のいずれもが持分あり医療法人の場合で、かついずれかの医療法人がもう一方の医療法人を吸収する吸収合併の場合に限られます。
つまり、合併前の医療法人のいずれかが持分なしの場合や、持分あり同士の合併であっても新設合併の場合は、合併後は持分なししか選択できません。
合併前後の医療法人の類型は下記のとおりです。
例えば、買手の医療法人が持分なし医療法人の場合で、売手の医療法人が持分あり医療法人の場合を検討してみましょう。 上記の方式に当てはめると、本件における合併後の医療法人は持分「なし」しか認められないこととなります。 この場合において、持分あり医療法人の出資者が持分を放棄した場合で、それが「相続税贈与税の負担が不当に減少した結果となると認められた」ときは、医療法人を個人とみなして贈与税が課税されることとなります。
買手が持分なしの場合は、売手の持分の有無を確認するとともに、贈与税課税を受けないようにM&Aスキームを検討する必要があります。
税制適格の要件を満たして資産負債を税務上の簿価で引き継ぐこととなるか、出資者にみなし配当課税は生じないか、売手の欠損金を買手が引き継ぐことはできるか、消費税の取扱い等が論点となります。