高額な評価額の出資持分を暦年贈与により承継されていましたが、認定医療法人制度のご提案をし活用された事例です。
本件の医療法人は純資産が高額であることから、暦年贈与による対策方法では大きく2つの問題点がありました。
第1に、将来の相続税の納税負担を圧縮するために暦年贈与を毎年行っていたにもかかわらず、その暦年贈与による贈与税も多額になることから、納税のために承継者の役員報酬を上げ、手取額の大半を贈与税の納税に充てていたことです。例えば出資持分15億円に対する相続税が8億2,500万円(55%と仮定)であることに対し、30年間で出資を暦年贈与すると仮定した場合の贈与税が約6億1,500万円、役員報酬の増額による所得税の増加が30年間で3億3千万円、合計で対策による納税が9億4,500万円となります。
第2に、贈与税の累進課税を抑制するためにできるだけ多くの親族の方々に出資を贈与されていましたが、将来経営者以外の出資者から社員退社による払戻請求を受けた場合に医療法人の資金繰りに問題が生じてしまうこととなります。
そこで、認定医療法人制度を使って医療法人の持分放棄を行い、多額の相続税・贈与税・所得税の納税を回避するとともに、将来の法人経営に支障が生じないようにすることをご提案し、認定医療法人制度をご活用されることとなりました。
納税の観点からは、この度の承継のみならず、その後も承継を繰り返すたびに本来は多額の納税が生じるべきところを、持分なし移行によりその納税は生じないこととなりました。
経営の観点からは、経営者が業績を上げれば上げるほど、非経営者の出資持分の価値は上昇し、将来の払戻請求金額も多額になる恐れがありましたが、持分なし移行により払戻による経営リスクを回避するすることができました。