M&Aのスキームの多くは株式譲渡により行うことが多いかと思われます。株式会社と医療法人の株式譲渡スキームの相違点についてご説明させていただきます。
株式会社における株式を取得した者は株主として、議決権の行使ができ、配当を受け取ることが出来ます。
これに対し、医療法人の出資を取得したのみでは医療法人の社員としての議決権を行使することはできず、配当を受けることはできません。
これは、株式会社では共益権(議決権)と自益権(配当)が基本的に一体となっていることに対し、医療法人は出資者と社員(議決権を行使できる者)は別々の存在とされていることによります。
なお、株式会社の株主は基本的に出資額に応じた議決権を行使することができますが、医療法人の社員は1人1議決権となります。
また、医療法人では配当はそもそも禁止されていますが、出資者が社員の地位も持っている場合は、社員の退社時に出資持分に応じた払い戻しを受けることが出来ます。
医療法人が他の医療法人の出資持分を保有することはできないと考えられます。
これは、医療法上、医療法人はその業務を行うに必要な資産を有しなければならず、その開設する病院、診療所又は介護老人保健施設の業務を行うために必要な施設、設備又は資金を有しなければならないとの規定に基づくもので、他の医療法人の出資はこれらに当てはまらないためです。
株式会社による医療法人の出資の取得はできますが、社員になることはできません。
ここで下記の2つの問題点が生じます。
以上の理由から、医療法人のM&Aでは通常出資の譲渡よりもまず退職金による清算が優先されることとなります。
また、譲渡金額の清算とは別に、社員の退任と選任の手続きが別途必要となります。