【医療法人M&A】承継後の会計事務所の選定

売り手にとってはM&Aの成立はゴールになりますが、買い手にとっては本当のスタートになります。

M&A後の事業の引継ぎや経営統合のことをPMI(Post Merger Integration)と言いますが、今回は医療法人のスモールM&Aにおける買い手の会計事務所の選定について取り上げたいと思います。

M&A後の顧問契約継続の判断軸

医療法人のスモールM&Aの場合は、買い手は勤務医から独立開業されたドクターである場合も多いと思われます。

M&Aにより無事医療法人を譲り受けて事業を引き継いだ後に、従来の会計事務所とそのまま顧問契約を継続されるのか、お知り合い等の税理士に顧問契約を変更するのかをご検討される局面も出てくるかと思われますが、その際の判断軸として、下記の3つの点をご参考にされてはと思われます。

  1. コスト面
  2. 医業経営の専門性
  3. 継続性

1. コスト面

これは、会計顧問契約の報酬自体もそうですが、そのほかに積極的にコスト削減の提案をしてくれるかどうかも検討材料となります。

例えば、従来の会計顧問の紹介元との関係性により、薬品や医療材料の卸会社からの仕入価格について相見積もりの提案ができなかったり、金融機関からの借入条件の交渉をしていないため、もしかしたら割高の仕入れ値や利率になっている可能性もあります。

第三者承継を機に、これらのコスト面について割高になっていないか確認してみることも必要かと思われます。

ただし、ただ単に金額が安ければよいというわけではなく、サービスの質やこれまでの関係性も総合的に勘案してご検討される必要があります。

2. 医業経営の専門性

医療法人の経営面でのオペレーションは、通常の株式会社とは異なる部分が多々あります。

会計顧問は今後末永く経営者のサポート役、相談相手として、医業経営の専門知識は必須となります。

例えば診療科目ごとの患者当たりの単価、レセプト単価、回転率、原価率、人件費率等の相場を把握しているか(例:回転率が高すぎるとリピート率の低下につながります。)、記帳や決算処理だけでなく毎月の経営報告は翌月にタイムリーに報告してくれているのか(例:半年遅れで試算表が出来上がるようでは、経営判断が適切に来ません。)、人事労務のお悩み事にも積極的に相談に応じてくれるのか等、買い手経営者のニーズに応じて判断する必要があります。

私は医療法人のスポット業務をご支援させていただいている税理士ですので、従来の会計顧問が例えば適切な局面できちんと医療法人成りのご提案をしていたのかとか、相続の際に認定医療法人制度の活用のご提案をされていたのか等も、気になるところです。

3. 継続性

昨今、医療法人だけでなく会計事務所も事業承継は大きな課題となっています。

上記で述べた通り会計顧問は今後末永く経営者のサポート役、相談相手としての役割を担う必要がありますので、
従来の会計事務所が今後も継続して運営されていくのか、担当者は頻繁に入れ替わったりしないのか等も大事になってきます。

会計事務所の所長税理士がご高齢の場合は後継者のめどが立っているのか、
従来の会計顧問に確認する必要があります。

「末永くお付き合いするためには個人の会計事務所よりも規模の大きな税理士法人のほうが良い」と言われることもありますが、担当者の独立時のお客様の引き抜きを回避するために会計事務所の方針として頻繁に担当者が変更することもありますので、きちんと引継がされて業務に支障が生じていなかったのかも確認する必要があると思われます。

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