医療法人成りされているクリニックの診療所不動産については、医療法人自身が所有しているケースよりも、理事長やその親族もしくはMS法人等の関連法人が所有しているケースが一般的には多いものと思われます。
主な理由としては下記のとおりです。
M&Aの際に、医療法人と一緒に診療所不動産も買い手に譲渡する場合は、もともとの診療所不動産の所有者が誰なのかに応じて対応方法を検討する必要があります。
もともと個人(理事長やその親族等)で所有している場合は、売り手から買い手(もしくは医療法人)に診療所不動産を譲渡することとなります。
MS法人で診療所不動産を所有している場合の対応方法としては、下記の3つの方法があります。
納税やイニシャルコストの面からは③が売り手にとっても買い手にとっても最も有利な方法と言えます。
ただし、MS法人で他に事業を行っていてその事業については譲渡しない場合や、これからMS法人で別の事業を開始したいと考えている場合は②の方法をとることになります。
医療法人はM&Aで譲渡しても、診療所不動産は譲渡せずに賃貸する方法も考えられます。
上記でご説明したとおり、引退後の売り手の継続的な家賃収入を確保することが可能です。
また、MS法人で不動産を所有し続けて賃貸する場合は、MS法人の経営者を理事長のご子息とすることにより、理事長ではなくご子息に給与として継続収入を確保することも可能です。
以前、売り手の理事長にM&Aの譲渡スキームをご提案した際に「私は引退後に生活するための資金は十分に持っているからそんなにお金はいらない。それよりも子供たちにお金を残してあげられる方法を考えてほしい。」と言われたことがありますが、その方法の1つとして当てはまると考えられます。
なお、身内で診療所不動産を賃貸している場合と、M&Aの後に第三者間で賃貸する場合では、賃料の考え方やその他の取り決めも異なってくることから、買い手としては長期の賃貸借契約を改めてきちんと締結し、権利関係を明確にしてM&Aの後に診療所不動産の利用に支障が生じないようにする必要があります。