皆さんこんにちは。税理士の藤澤文太です。税制改正により認定医療法人制度が令和8年末まで延長されることとなりました。そこで今回は、認定医療法人制度とはそもそもどのような制度なのかについてご説明させていただきます。
(細かい法律論や制度内容の詳細は他の専門家の方々や厚生労働省の説明にお任せするとして、)認定医療法人とは、「一定の要件を満たしていることを厚生労働大臣に認定された医療法人」のことを意味します。
「税制」と「融資」で大きなメリットがあります。
相続税と贈与税の納税猶予・免除のことを言います。
医療法人の出資持分も他の相続財産と同様に出資者の相続財産として相続税が課税されます。 生前に贈与した場合は贈与税の課税対象になります。 ただし、あくまでこれは「出資持分のある医療法人」の場合であり、「出資持分のない医療法人」の場合は当たり前ですがそもそも出資がないので相続税や贈与税は課税されません。 そこで、持分ありから持分なしに移行すれば相続税や贈与税を払わずに済むのではないかと発想しがちですが、原則的には移行時に医療法人に贈与税が課税されます。 認定医療法人制度は、一定の要件を満たして厚生労働大臣に認定を受けることにより、この「移行」の際の課税を回避して、事業承継を円滑に行おうという制度です。
もともと出資持分なし医療法人であればよいのですが、全国の医療法人のうち約37,000法人が出資持分あり医療法人です。 これらの出資持分あり医療法人の事業承継を円滑に行い、地域医療を維持することを目的に活用されているのが認定医療法人制度です。
下記のような事例を考えてみましょう。
例えば純資産(=医療法人の総資産ー負債総額)10億円の医療法人があると仮定します。 ※純資産、税務上の評価額、払戻額がすべて10億円の医療法人であると仮定しています。
いろいろ方法を検討しても結局袋小路に陥ってしまうことになります。
3つの方法があります。
裏を返せば、持分がなくなること自体がデメリットと言えます。 持分がなくなることにより、①払戻を受けることが出来なくなる、②M&Aの手段が退職金での清算のみに限定されることとなる、というデメリットがあります。 そのほかに、接待飲食費以外の交際費が全額損金不算入になる場合があったり、中退共への加入要件を満たさなくなる場合があるなどのデメリットがあります。
ただし、①の払戻については、払い戻しを受ける前提として社員を退社しなければいけませんで、結果的に法人の最高意思決定権を失うこととなります。まだまだ現役で経営をされる場合や、ご勇退後も一定の影響力を法人に残して承継者を正しい方向に導きたいとお考えの場合は注意が必要です。
また、極端な例ですが、例えば10億円の出資を相続して払戻を受けるケースを想定した場合、相続時に約半分(約5億円)の相続税を納税し、払戻時にさらに約半分(約5億円)の所得税を納税することになりますので、10億円の払戻を受けているようで結局医療法人のお金10億円分が納税されているだけとなる可能性があるので慎重にご検討していただく必要があります。
ここで強調したいのは、「持分なし移行が絶対に有利です」ということを言いたいのではなく、正しい知識と理解を持っていただいたうえで方向性をご検討していただきたいということです。
細かく説明するとかえって意味が分からなくなるので、ここでは大筋のみのご説明にとどめさせていただきます。
認定医療法人制度以外に移行時に贈与税が課税されない方法としては主に、社会医療法人制度の活用、特定医療法人制度の活用、個々の税法の要件充足を自分でチェックして移行する方法が考えられます。 ただし、これらの方法は認定医療法人制度に比べていずれも要件が厳しいものとなっております。 特に、役員等に占める親族等の割合が3分の1以下であることが要件となっており、実質的に親族経営での活用ができないことがこれまでの足かせとなっていました。
逆に、認定医療法人制度は親族の割合が100%であっても上記Q7の要件を満たしていれば非課税で持分なしに移行することができます。
この制度が令和5年9月までの時限立法であったのが、税制改正により令和8年末まで延長されることとなりました。
※令和5年9月までに「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」の改正が前提とされています。