【ヒヤリハット事例1】医療法人の事業承継:医療法人の相続

今回は、医療法人の事業承継についてのヒヤリハット事例をご紹介させていただきます。

医療法人の相続事例

ある金融機関から医療法人の理事長をご紹介いただき、認定医療法人制度についてご案内させていただいたことがありました。

一通りのご説明を終えた後、理事長から「もう少し早くあなたのご説明をお聞きしたかったですね。実は半年前に先代理事長の相続税の申告をして、3億円くらい納税したんですよ。」とのこと。

皆様はこの事例から、どのようなヒヤリハットをご想像されますか?

医療法人の出資が相続財産に含まれている場合に
検討すべき事項

検討すべきことはいろいろありますが、今回は特に以下の4つについてご案内させていただこうと思います。

  1. 認定医療法人制度のご提案
  2. 国外転出時課税制度
  3. 小規模宅地等の特例の適用 ④第三者承継のご案内

認定医療法人とは?

(細かいご説明は別のコラムで改めてご説明させていただこうと思いますが) 簡単に言うと医療法人の事業承継で問題となる「経営リスク」と「相続税・贈与税の課税」を解決するために時限的に規定されている制度です。

この制度を利用することにより、承継時の当面の納税や今後の納税を回避できるとともに、出資者から医療法人への出資持分の払戻請求による資金繰りの悪化を防ぐことができます。

一定の要件を具備して持分なし医療法人へ移行することにより可能となります。

▼こちらの説明もご参照ください。

ヒヤリハット①
認定医療法人制度のご提案

例えば本件の事例の場合で、私がもう少し突っ込んで「相続税の申告をご依頼された税理士さんから、認定医療法人制度のご説明はありましたか?」とお聞きしたらどうなっていたでしょうか?

「いえ、そんな説明一切ありませんでした。」とのご回答になることが大半かと思われます。

認定医療法人制度では、相続税の申告期限までに厚生労働大臣の認定を受けることができれば、医療法人の出資についての相続税を大幅に軽減することができます。

少なくとも相続税の申告を請け負った税理士としては、(ご自身の信条や納税者の選択はどうであれ)ひとまずは認定医療法人制度のご説明をする必要があると思われます。

もし後々に納税者から「ちゃんと説明を受けていれば認定を受けていたのに。。」と言われたら、最悪の場合、損害賠償問題にもなりかねないと思われます。

ヒヤリハット②
国外転出時課税制度

医療法人と国外転出?なんのこっちゃ?と思われるかもしれません。

例えば被相続人(本件では先代理事長)のご子息が海外へ長期留学や転勤、海外の病院等で勤務されている場合を想定しています。

先代理事長の所有する医療法人の出資持分が1億円以上の場合、4か月以内にその出資持分に対して譲渡所得税が課税される場合があります。

留意すべき点は以下の通りです。

  1. 医療法人の出資の価額は財産評価基本通達194‐2ではなく所得税基本通達59-6の評価額で判定します。
  2. 遺産分割協議が未了のときは、非居住者の法定相続分に国外転出時課税制度の適用があります(民法の規定により、その相続財産は法定相続人の共有として取り扱われます)。

ドクターのキャリアの一つとして、海外の大学病院へ留学されている場合も多々あります。
医師の親族には医師が多いので気を付けたいところです。

ヒヤリハット③
小規模宅地等の特例の適用

先代理事長が医療法人に土地を賃貸していた場合、他の土地等との兼ね合いもありますが、小規模宅地等の特例を使って、(一定の要件を満たしていることを前提に)その土地について400㎡まで80%の評価減を受けることができます。

ただし、医療法人が持分なしであれば、(一定の要件を満たしていることを前提に)200㎡まで50%の評価減となります。

相続開始後に認定を受けるのであれば、(一定の要件を満たしていることを前提に)400㎡まで80%の評価減を受けることができます。

ヒヤリハット④
第三者承継のご提案

実は、親族内承継のご提案をした場合に、「後継者がいないのでM&Aを検討している」とのご相談をいただくことが多々あります。

本件でもそのようなご相談をいただきました。 専門家として親族内承継、第三者承継のいずれのご相談にも応じることができるように日々研鑽を重ねていきたいと考えております。

最後に

もしご不明な点やご相談がございましたら、下記よりお問い合わせください。

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